ブログ

警察の取調べへの対応について②

1 自白調書を作らせない
否認事件においても、早期釈放を求めることは自白事件と同じです。 それに加えて、否認事件において特に大切なことがあります。それは、捜査機関に自白調書(=容疑を認める内容の調書)を作らせないということです。
日本の裁判では伝統的に自白調書が重視されてきました。いったん自白調書が作られてしまうと、後の裁判で無罪を主張しても、ほとんどの場合、「自白調書と矛盾しており信用性がない」として退けられてしまいます。そして、捜査機関の思惑通り、自白調書に基づいて有罪判決が下されることになります。
このように、いったん自白調書が作られてしまうと、後々取り返しのつかない結果になりかねません。
自白調書がなければ捜査機関にとって有罪判決へのハードルが高くなります。結果的に嫌疑不十分による不起訴処分の可能性が高まります。

2 黙秘権を行使する
自白調書が作成されることを防ぐためには、黙秘権を行使する必要があります。黙秘権は憲法及び刑事訴訟法で保障された権利です。捜査機関がこれを侵害することは許されません。もっとも、極度の緊張を強いられる取調べの現場で、最後まで黙秘を続けることは容易なことではありません。黙秘を貫くためには、弁護士による継続的かつ精神的なバックアップが不可欠です。

3 黙秘権を行使しない場合のデメリット
① 自分の考えを述べれば述べるほど、後の法廷での発言と矛盾する可能性が高まる
いったん供述調書が作られると、後の刑事裁判で、本人が自分の考えを述べたとき、その内容が少しでも調書の内容と違っていると、検察官から「なぜ供述調書に書かれている内容と違うんですか?」と突っ込まれることになります。
取調べにおいて、被疑者は自白を迫る捜査機関からの巨大なプレッシャーにさらされます。そのような状況で、被疑者が記憶と異なることを言ってしまうことも少なくありません。しかし、ひとたび供述調書が作られてしまうと、後に法廷で言い間違いを訂正しただけで、「嘘をついているのではないか?」等と勘繰られることになってしまいます。
② 取調官が被疑者の発言から得られた情報を利用して、被害者等の供述調書を作成する
被害者や目撃者が、被疑者のことを犯人だと思っていたが、確かな根拠はなかったとします。確かな根拠がない以上、取調官も説得力のある被害者・目撃者の供述調書を作成することはできません。
このようなケースで、被疑者が自分の考えを詳細に述べれば、取調官がその発言に含まれている情報を利用して、被害者や目撃者に誘導尋問をし、その結果、(見かけ上)説得力のある供述調書が作られてしまうことがあります。

4 黙秘権を行使した場合のデメリット
黙秘権は被疑者・被告人に認められた権利ですので、黙秘すること自体によって処分が重くなることはありません。ただ、自白して反省している被疑者・被告人と比べると次のようなデメリットがあります。
①勾留される可能性が高まる
逮捕された後、検察官と裁判官に証拠隠滅のおそれがある判断されると勾留されてしまいます。いったん勾留されると原則10日、最長20日間にわたって身柄が拘束されます。
一般的に、黙秘せずに素直に供述していれば、「反省しているので証拠隠滅のおそれはない」と判断され、勾留されずに釈放される可能性が高まります。これに対して、黙秘していると、反省しているかどうかもわからないので、「証拠隠滅のおそれがある」と判断されやすくなり、勾留される可能性が高まります。
ただ、黙秘すれば必ず勾留されるわけではありません。例えば、痴漢(迷惑防止条例違反)については、現在の実務では、取調べで黙秘していても勾留されずに釈放されることが多いです。
逆に、振り込め詐欺等の組織的犯罪や強制性交等といった重大犯罪では、黙秘しようが自白しようが、いずれにせよ勾留されますので、勾留の可能性が上がるという意味でのデメリットはないということになります。
また、黙秘することにより嫌疑不十分で不起訴処分になれば、逮捕後約3週間で釈放されますが、自白して起訴されれば、保釈が認められない限り、その後も身柄拘束が続きます。
②早期保釈の可能性が下がる
裁判官に証拠隠滅のおそれがあると判断されれば、保釈は許可されません。①で述べたように、黙秘していると反省しているかどうかもわからないので、正直に話している被告人と比べると、証拠隠滅のおそれがあると判断されやすくなります。
起訴前の時点で自白していれば、起訴直後に保釈されることも少なくありませんが、起訴前に黙秘していると、起訴直後の保釈は難しくなります。
もっとも、起訴前に黙秘していたという理由でずっと保釈が認められないわけではありません。裁判が進むにつれ、取調べ済みの証拠も多くなり、それに伴い証拠隠滅の可能性が低下していきます。そのため、保釈が許可される可能性は上がっていきます。

5 言うべきことがある場合
事案によっては、被疑者の言い分を捜査機関に対して積極的に明らかにした方が不起訴を見込める場合もあります。そのような場合は、弁護士が被疑者と打ち合わせをした上で、被疑者の主張を簡潔に記載した書面を検察官に提出します。