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器物損壊の場合の刑事弁護方針

1 器物損壊罪とは

器物損壊とは①他人の物を損壊すること,②他人の動物を殺傷することです。
「損壊」とは物の効用を害することです。物理的に破損させる場合だけではなく、その物を本来の用途にしたがって使用できなくすることも「損壊」にあたります。後者の例として、食器に放尿する行為や窓ガラスにビラを貼り付ける行為が挙げられます。

器物損壊罪が成立するためには、物を破損することについての認識(故意)が必要です。故意が認められないときは、器物損壊罪は成立しません。

器物損壊は、「親告罪」といって、告訴がなければ起訴することができない犯罪です。

2 暴行罪や傷害罪との関係

暴行や傷害のケースで、加害者が被害者に接触した際、衣類などを破いてしまったときは、通常は暴行か傷害のみで処理され、器物損壊では立件されません。
暴行の認識がある以上は、衣類などを損壊してしまうかもしれないという限度で器物損壊の故意も認められますが、衣類などの破損については、暴行や傷害に通常伴うものとして、包括的に評価されます。
ただ、示談をする際には、これらの物損についても賠償することが必要になります。

3 刑事事件弁護の方針は示談が最重要課題となります。

4 器物損壊のパターン

①飲酒による器物損壊
酔っぱらって飲食店の備品を壊したり、タクシーの車体や自動販売機などを蹴ってしまうといったケースです。器物損壊で最も多いパターンです。本人が泥酔して暴れているようなケースでは、自傷他害のおそれが強く、逮捕される可能性は非常に高いです。
ただ、「覚えていない」として否認を続けない限り、勾留されずに釈放されることも少なくありません。示談については破損させた物の修理・交換費用がベースになります。
店の従業員やタクシードライバーに暴力をふるった場合は、器物損壊とは別に、暴行事件、傷害事件として立件されます。示談については個別に対応する必要があるでしょう。

②性的な衝動による器物損壊
満員電車内で女性に精液をかけるケースが考えらえます。精液をかける前に、女性の身体に触ったり、下半身を押し付けたりしている場合は、器物損壊の他に迷惑防止条例違反または強制わいせつでも立件されることになります。
現行犯逮捕されることが多いですが、前科がある方の場合、いったんその場から逃げても、後日、女性の衣服から採取したDNA鑑定で足がつき、逮捕されることが多いです。前科がない方でも、後日、別の刑事事件を起こし、DNAを採取されれば、逮捕される可能性が十分にあります。
被害女性は大きなショックを受けていますので、示談に際しては、汚損した衣服の着用代金に加えて相当額の慰謝料を支払う必要があるでしょう。

③人間関係のもつれによる器物損壊
職場内でのトラブルから同僚の私物を持ち去り廃棄するケースが考えられます。単に廃棄しただけで、暴行・傷害・脅迫など他の犯罪行為をしていなければ、逮捕される可能性は低いです。
このようなケースでは、器物損壊に至る前に、加害者・被害者間にパワハラ・セクハラ・男女関係のもつれ等のトラブルが生じていることが多いです。示談に際しては、器物損壊だけではなく、背景事情にも留意した上で、抜本的な解決を図る必要があります。
職場内で発生した器物損壊のケースでは、警察に通報される前後の時点で、会社にも発覚しているのが通常です。その場合、会社の懲戒手続に適切に対応することが必要です。最も重要なことは、会社の調査手続で誤まって窃盗と認定されないようにすることです。
職場内での窃盗事件については、懲戒解雇を含めた厳しい処分で臨む会社が多いです。いやがらせ目的で私物を廃棄しただけであれば窃盗にはあたりませんので、弁護士が人事担当者に事情を説明する等して、まずはその点を会社に納得してもらうことが必要です。

④愉快犯的な器物損壊
民家や商業施設、テーマパーク等に駐車されている自動車に傷をつけるケースが考えられます。
防犯カメラが決め手となって検挙されることが多いです。繰り返し行っている場合は、張り込み捜査によって検挙されることもあります。逮捕される可能性はかなり高いです。
示談金については車の修理費用相当額が基準になります。それほど大きな傷でなくても、修理費用が数十万円になることもあります。損害の立証が比較的容易なことから、示談が成立しなければ民事裁判になる可能性が十分にあります。

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